今回も前回の続きで年金制度を詳しく見ていきます!年金制度の概要についてはこちら
老齢年金の受給権が発生したら実際にいくらもらえるのか見ていきましょう!
まず、年金の受給権が発生したら受給権者自らが国に対して受給権の確認と年金給付請求(裁定請求)を行わなければいけません。具体的な手続きは加入していた年金の種類によって違いますが、年金事務所や市町村の国民年金課、共済組合の窓口などに裁定請求書を提出します。支給期間は受給権が発生した月の翌月(通常、誕生月の翌月)から死亡した月まで。原則偶数月の各15日に前月までの2か月分の年金が振り込まれます。
年金受給額は物価や賃金の伸びに応じて改定されますが、
2018年12月に厚生労働省年金局で発表された最新の資料で見ていきたいと思います。
老齢基礎年金
先ほど紹介した年金受給権(受給資格期間10年以上)を持っている人が受け取れる老齢年金年金額は加入期間だけで決まる定額年金20歳~60歳までの全期間(40年間)加入した場合、65歳からの支給で780,100円となりますので、1か月あたりの支給額上限は65,008円 ※2012年4月は786,500円、2018年4月は779,300円 2017年の実際の平均受給額は55,615円ですので40年間全額納めた方に比べて
9,393円少ないことがわかります。
老齢厚生年金
会社員や公務員であった期間のみ加入でき、65歳から支給することができる。(加入期間は1か月という方もいれば40年という方もいる)※大前提として老齢基礎年金の受給権を満たしていないと受給できません年金額は加入期間の平均報酬額により変わる所得比例年金
報酬比例部分※+(加給年金額*1)
*1 厚生年金の加入期間が20年以上ある人が特別支給の老齢厚生年金の定額部分、または老齢基礎年金が支給される時点で、65歳未満の配偶者または子がいる場合、配偶者加給年金と特別加算額を合わせて(約39万円)が併給されます。
※第1子、第2子は1人につき224,500円。第3子以降は1人につき74,800円年金上の配偶者とは・・・必ずしも妻とは限らず、夫婦(事実婚を含む)は互いに配偶者となります。
18歳に達する日以後の最初の3/31までの未婚の子
または20歳未満で障害等級1級、2級の子
※2018年度の受給額(2017年も同額)
特別支給の老齢厚生年金
1986年4月に基礎年金が導入されるまでは老齢厚生年金は60歳から支給されていました。改正に伴い直ちに支給開始年齢を65歳に引き上げると混乱を招くため、段階的にスムーズに引き上げるために設けられたのが『特別支給の老齢厚生年金』です。加給年金なども条件によっては加算されます。65歳になると定額部分が老齢基礎年金に切り替わるイメージです。定額部分+報酬比例部分+(加給年金額*1)※対象者は生年月日が男性1961年4月1日以前、女性1966年4月1日以前となります。
2017年の実際の平均受給額は147,051円(老齢基礎年金+老齢厚生年金)
しかしながら、厚生年金保険に関しては、男女差が非常に大きく、所得によって大きく年金額が変わりますので、実際の支給見込み額を後述の『ねんきん定期便』でご確認ください。
※報酬比例部分の額の『ねんきん定期便』の記載場所
50歳未満
50歳以上
3階部分の企業年金等
厚生年金基金
などの企業年金は勤めている会社に企業年金制度があれば強制的に加入また、公務員が入る『年金払い退職給付』は公務員であれば例外なく加算があります。このほかに個人型確定拠出年金(401k)、個人年金保険などがあります。また、2階部分がない自営業者などの第1号被保険者は『国民年金基金』という半公的年金制度もあります。
次に障害年金について見ていきましょう!
前述のとおり、障害年金とは、病気や怪我で障害が残った時に受け取れる年金です。 若い方でも障害年金の受給要件に当てはまれば受給できるので、その点が老齢年金との違いです。
また、障害者手帳の交付とは関係なく、手帳を所持していなくても受給できます。
基本的には病名などで分別されておらず、日常生活や仕事に支障があるかどうかで判断されます。 障害年金も障害基礎年金と障害厚生年金に分別されます。
障害基礎年金
国民年金の加入者が受給できる障害年金障害の度合いに応じて1級、2級にわけられます。
受給要件
次の3つの要件をすべて満たすことが必要
①初診日(*1)に国民年金の被保険者であること
(20歳未満、または60歳以上65歳未満の間に障害が生じその状態が続いている人も可)
②障害認定日(*2)に障害の程度が1級または2級に該当していること
③保険料納付要件を満たしていること
(保険料納付期間と免除期間の合計が2/3以上あること)
*1病気または怪我で初めて医師の診断を受けた日
2傷病が治癒していない場合は初診日から1年6か月を経過した日。1年6か月以内に治癒していた場合はその日。傷病が治癒とは症状が固定し、これ以上療養の効果が期待できない状態。初診日が20歳より前の場合の障害認定日は、初診日から1年6か月または20歳になった日の遅い方。
受給額
1級(老齢基礎年金の1.25倍)
780,100円×1.25+子の加算
2級(老齢基礎年金と同額)
780,100円+子の加算
※第1子、第2子は1人につき224,500円。第3子以降は1人につき74,800円
年金上の子とは・・・18歳に達する日以後の最初の3/31までの未婚の子。または20歳未満で障害等級1級、2級の子
※2019年度の受給額
障害厚生年金
厚生年金の加入者が受給できる障害年金障害の度合いに応じて1級、2級、3級、障害手当金(一時金)にわけられます。
受給要件 障害基礎年金とほぼ同じですが、『厚生年金保険の被保険者期間中に初診日がある』という条件がつきます。
受給額
1級
報酬比例の年金額×1.25+{配偶者の加給年金額(224,500円)}
2級報酬比例の年金額+{配偶者の加給年金額(224,500円)}
3級報酬比例の年金額(最低保障額585,100円)
※配偶者の加給年金とは、その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるとき加算
障害年金受給対象者の要件 身体障害
眼、聴覚、肢体の障害など
内部障害呼吸器、腎疾患、肝疾患、心疾患、血液・造血器疾患、がん、糖尿病など
精神障害鬱病、総合失調症、てんかん、認知症、知的障害、発達障害など
それぞれの等級のイメージとしては
1級・・・常時他人の介助を受けなければ、身辺の自立が不可能な状態
2級・・・日常生活が著しい制限を受ける困難な状態で、労働による収入を得ることが困難
3級・・・労働に制限または、著しい制限がかかる状態
それぞれの等級について詳しくはこちら
<参照>厚生労働省『国民年金法施行令別表』
最後に遺族年金について見ていきます。
遺族年金とは国民年金、厚生年金にご加入の方が亡くなった場合、生計維持関係などの一定の要件を満たす遺族に対して支給される年金です。 詳しく見ていきましょう!
遺族基礎年金
国民年金の加入者が受給できる遺族年金
受給要件
次のいずれかに該当することが必要
亡くなった方の要件
①国民年金の被保険者であること(*1)
②国民年金に加入していた人で、日本国内に住所があり、60歳以上~65歳未満(*1)
③老齢基礎年金を受給中
④老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある方が亡くなった時 遺族の要件
亡くなった方によって生計を維持されていた子のある配偶者、または子(*2) *1次の2つの要件のいずれかを満たす必要あり
①亡くなった日の2か月前までの被保険者期間の中で、保険料納付期間と免除期間の合計が2/3以上あること
②亡くなった日の2か月前までの1年間に保険料の支払いを滞納していないこと
*2生計維持関係とは遺族の前年の収入が850万円未満、または所得が655万5千円未満
2014年3月までは子のある妻に限定されていましたが、改定があり、子のある夫も対象となりました。子の要件は
受給額
780,100円+子の加算
※第1子、第2子は1人につき224,500円。第3子以降は1人につき74,800円
遺族が子どもだけの場合は、780,100円に第2子以降の加算をします。
子どもが1人・・・1,004,600円
子どもが2人・・・1,229,100円
子どもが3人・・・1,303,900円
遺族厚生年金
厚生年金の加入者が受給できる遺族年金遺族基礎年金との大きな違いは
年金上の子がいない場合でも受け取ることができるということです。
受給要件 次のいずれかに該当することが必要
亡くなった方の要件
短期要件(主に現役世代)
①厚生年金の被保険者であること(*1)
②厚生年金加入中に初診日がある傷病がもとで、初診日から5年以内に亡くなった時(*1)
③1級、2級の障害厚生年金を受給できる者が亡くなった時
長期要件(主に年金受給世代)
④老齢厚生年金を受給中
⑤老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある方が亡くなった時
遺族の要件
亡くなった方によって生計を維持されていた
①妻、または子(*2)
②55歳以上の夫
③55歳以上の父母
④孫
⑤55歳以上の祖父母
*1 次の2つの要件のいずれかを満たす必要あり
①亡くなった日の2か月前までの国民年金の保険料納付期間と免除期間の合計が2/3以上あること
②亡くなった方が65歳未満の場合、亡くなった日の2か月前までの1年間に保険料の支払いを滞納していないこと
*2 生計維持関係とは、遺族の前年の収入が850万円未満。または所得が655万5千円未満
2014年3月までは子のある妻に限定されていましたが、改定があり、子のある夫も対象となりました。子の要件は
受給額 大まかにいうと亡くなった方が本来受け取るはずだった老齢厚生年金額の3/4
短期要件、長期要件によって受給額が変わってきます。
複雑ですが長期要件の計算式を載せておきます。
本来水準(①+②)×3/4
①平均報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの被保険者期間の月数
②平均報酬額×5.481/1000×2003年4月以後の被保険者期間の月数
※(①+②)は亡くなった方が死亡日時点で計算した老齢厚生年金(報酬比例部分相当)の額
従前額保障(本来水準がこちらを下回った場合はこちらを採用)
(③+④)×0.999(*1)×3/4
③平均報酬月額×7.5/1000×2003年3月までの被保険者期間の月数
④平均報酬額×5.769/1000×2003年4月以後の被保険者期間の月数
*1 <現在の物価スライド率>※1938年4月2日以降生まれの方は0.997
※老齢厚生年金(報酬比例部分相当)の額については
短期要件の場合、被保険者期間が300月(25年)未満の場合は300月とみなして計算します。
妻または子が受給する場合は、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受給できます。また、遺族厚生年金に関しては一生涯支給されます。
※30歳未満の子のない妻の場合は5年間の有期給付となります。遺族基礎年金と違い、子どもがいない配偶者も遺族厚生年金は受給可能
会社員の妻が亡くなった場合の夫の夫の受給要件について見ていきます。
夫が55歳以上
60歳から遺族厚生年金を受給できます。
60歳までは遺族基礎年金を受給している場合に限り、遺族厚生年金を併給できます。
60歳になる前に子が18歳の年度末になり、遺族基礎年金の受給権が失権した場合は、遺族厚生年金は60歳になるまで支給停止となります。
55歳未満
遺族厚生年金の受給権がそもそもありません。
遺族基礎年金が受給される場合でも、遺族厚生年金は子に支給されます。
遺族厚生年金の加算額
妻が受け取る遺族厚生年金には、40歳~65歳に達するまでの間、中高齢寡婦加算が追加して支払われます。
次のいずれかに該当することが必要
亡くなった方の要件
短期要件(主に現役世代)
の場合、300月みなしをするので厚生年金の被保険者期間に関わらず加算されますが、
長期要件(主に年金受給世代)
の場合、厚生年金の被保険者期間が20年以上あれば加算されます。
遺族の要件
生計を維持されていた、40歳以上65歳未満の妻(子の有無は関係なし)
40歳未満の妻は、遺族基礎年金が失権された時点で、40歳以上65歳未満の場合。逆に遺族基礎年金を受給中の場合は、加算停止となり、遺族基礎年金失権後からの受給となります。
中高齢寡婦加算の額は遺族基礎年金の3/4相当額(2019年度は585,100円)
妻の生年月日に関わらず定額です。
また、妻が65歳になると自分の老齢基礎年金が受けられるため、中高齢寡婦加算は支給されなくなり年金額が減っていしまいます。
そこで1956年4月1日以前生まれの方に限って経過的寡婦加算が遺族厚生年金に加算されます。こちらは生年月日に応じて加算額が異なります。 中高齢寡婦加算、経過的寡婦加算ともに、特に手続きは必要ありません。
遺族厚生年金の受給権がある方には条件に応じて加算されます。
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